野心家の哀歌──コトチカ

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自分の心が色々迷い始めていたが、碧伊は碧伊自身の夢が大事だからと言って、部活に更に打ち込むようになって、俺は街をぶらついてから帰宅するようになっていた。 今まで寄り道をしたことがなくて、少し遠回りして帰るうちに、街をぶらついて放課後を楽しめる時間にしたかったんだと思う。 今日もぶらついていたが、一人だと飽きるのも早くて、碧伊に頼んで一緒にぶらついてもらおうかとも思ったけど、何かしら見返りを要求されるのが分かってたから誘わなかった。 「あの、失礼ですが、少しお時間よろしいでしょうか?」 「え?俺…ですか?」 「ええ」 口調の固いスーツを着た若い兄ちゃんに呼び止められる。 にこやかにしてるけど、明らかに無理して笑ってる。 胡散臭い奴に捕まったな…。 「私はライゼプロダクションの川田(カワタ)と言います。名刺です、どうぞ」 両手で差し出された名刺を両手で丁寧に受け取ってしまったが、これって逃げられないパターンじゃないのか!? 仕方なく受け取った名刺をしげしげと眺める。 プロダクションて…芸能事務所だったのか。 特に名刺自体に怪しい部分はないみたいだけど、まだ信用できないな。
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