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第一章 キモオタとイケメンと弁当と
「もし明日、死ぬってなると、何する?」
「えー、急に言われても困るよ」
チャイムの音で、他愛もない会話が断ち切られる。田園広がるのどかな田舎高校では、こんな会話が流行ったりした。しばらくして先生が一年一組の教室へ入って来て授業が始まる。
「おい、武小山、教科書は?」
「あー、忘れましたー」
気の抜けた声の主は、武小山豪志、わたし羽佐間華那の幼馴染だ。短髪に太眉毛、太ってさえいないが、背も高くなければ、これといって特技があるわけではない。ただ単に親同士が仲が良く、家も隣どうしだということで仕方なく幼馴染になったのだ。
いや......特技は一つあった。いつもボケっとしていて冴えない奴のくせに自分では何一つ気づいていないということだ。
「しょうがないな、隣の羽佐間、見せてやれ」
「えー、またー?」
「へへっ、悪いね」と、机を寄せてくる豪志、眉頭を上げて本気で嫌がった。ラノベや漫画なんかで幼馴染といえば、仲が良かったり、恋愛対象になったりするのだろうが、わたしの場合はそうはならなかった。何故かというと、豪志はわたしの好きなタイプの真逆だったからだ、近くに寄るだけで拒否反応が出てしまう。カードゲームと天体観測を趣味に持つ彼は、わたしから言わせると、ただのキモオタだった。
教科書を真ん中に開いて置くと、まるで病原菌のような扱いで、豪志から椅子を離して座った。
特技を発揮する豪志はやはりその事には気づいていないようだ。何故この席になってしまったのかを呪いたくなる。
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