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Iceman
夜が来た。
家中、皆が寝静まったのを感じて俺は起き上がった。寝起きに付きものの気怠さと浅い頭痛を感じ、床に転がったペットボトルを拾い上げてぬるい水を喉に流し込む。
寝ている間にカーテンレールに掛けられていたハンガーを手に取って着替えた。上下ともに黒いロンTと黒いワークパンツ。黒で統一しているのは理由がある。
手を振ってみて確認したが運動することに問題がない。
俺は窓を開いて夜の闇へと飛んだ。
最初の頃は雨どいを伝って降りていたのだがもう慣れたもので二階の俺の部屋から庭に飛び降りてもケガ一つない。
「行くか」
玄関口に回って表に出た。冷凍睡眠している住宅地に背を向けて、眠らぬ繁華街へ進んだ。
三十分ほどかけて俺の目指した場所は繁華街の大通りから少し外れた通りにある廃工場だった。この辺りは工業地帯であり、夜になると人の少なさゆえに中々にいい雰囲気が出る。一人で歩く俺など夜に潜む悪漢どもから見れば格好の鴨なのかもしれないが、望む所だ。
彼と合流する前に一仕事済ますというのも悪くない。そう口の端を歪める俺だったが、生憎とトラブルに恵まれることなく目的地に到着した。
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