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体を揺さぶられて微睡みから覚めるとよく知った顔が俺を見下ろしていた。
「もう夕方だよ。起きなよ」
体を起こして腐った眼を向けると彼女は一瞬だけ身を竦ませた。
「こんばんは、詩織」
「間違ってないのに釈然としないなぁ」
世話焼きの幼馴染に揺すられての起床。まるで漫画だが生憎と現在は夕暮れだ。ああそうか、俺が登校拒否の落伍者に堕ちてもう一月か。その事実に今更ながら気づいた。夜起きて朝寝る。そんなダメ人間の見本のような生活習慣になってから。
「おばさんが上げてくれたんだよ。そろそろ起こしてやってくれって。ねえ智ちゃん、あのね今日さ、学校でね……」
躊躇いがちにそれでも殊更、明るい声色を作る彼女に世間話の続きを促す視線を向けた。だがその目はさぞ濁っていたことだろう。彼女は再び射すくめられたように言葉を失い視線を落とした。
「なあ詩織、もう来なくていいよ」
俺がそう言うと詩織は小さく「えっ」とこぼした。
「毎日毎日こんなクズのためにお前の時間を無駄使いさせるの悪いと思ってんだ。幼馴染ってだけで面倒事背負わされてお前だって迷惑してるだろ」
「そんな、迷惑なんて……」
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