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両親を火事で失った景は 無理心中で亡くなったとされる警察の捜査を 信じていない。 誰かに殺されたのではないか。 ずっとそう思いながら今まで生きていたのだろう。 あの線香花火の夜 誰かからきっと情報を提供されたのだ。 それは景の中にある疑惑を 確信へ変えたのかもしれない。 そして それを謎解く鍵が 政友会の遠藤という男なのか。 そして景は文字通りボロボロになった。 神経も体力も精神力も全て使い果たし 元の腕の中で 落ちていく。 抱きかかえ車に向かう。 どうせ問題にはなるだろうが 今 警察に景を引き渡す事は出来ない。 足早にその場を離れ 懇意にしている 原田病院へ向うよう 車で待っていた龍に告げる。 柏木組の息がかかった病院で 多少の無理は通るし 警察に通報される事も ない。 現場の後始末は高嶺がきっちり やってくれる。頼りになる相棒だった。 俺たちはもう学生じゃない。 褒められる仕事じゃないが れっきとした柏木組の一員だ。そして俺は 次期三代目として 事業も軌道に乗せた。 今なら景を守れる。やっと追いついた気がした。 そう思っていたのに。。 景は自分の居ない所で 心身ともに傷まみれになっていた。 治療が終わると景はそのまま入院となった。 全身打撲。骨折が無かったのがせめてもの 救いだが しばらく身動きは取れないだろう。 とりあえず大事に至らず ホッとしながら ベッドに横たわる景を見た。 景は死にたいのだろうか。 真実を追い求めながら 簡単に命を 粗末にする。 なんで。。。と 景を昔のように揺さぶりたくなる。 景が俺たちと家族にならなかった理由は わかった。 だが今の俺にはもうそんな事は たいした事じゃない。 ただ景が欲しい。 欲しいのだ。 気がついたら眠っていたらしい。 髪を軽く撫でられている。 気持ちいい。 懐かしい。 ゆっくり景を見る。 目が謝っている。 痛いと言う景に自業自得だと吐き捨て まぁなと苦笑いする景を見ていると たまらなくなった。 だがじっと景を見つめる。その瞳の奥にある 本当の気持ちが知りたい。 景は困ったように 少し恥じらいながら 目を逸らした。
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