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だがそうでも無かったらしい。 炎は未だに景の中で激しく燃え続け 元がいくら水をかけても ますます 燃え広がるばかりだ。 辛い。 何も出来ないのは辛い。 景の気持ちを楽にしてやる事も 抱きしめてやる事も 今の元には何も出来ない。 これからの元も何も出来ないのかもしれない。 何をしてもその火は消えないのかもしれない。 元は景を見た。 その目に絶望が写っていただろうか 景は目を瞬きそっと元の頬を触ろうと 手を近づける。 反射的にその手を掴み 景を押し倒した。 びっくりして顔を背ける景の顎を抑え その 唇を激しく奪う。 「・・っい・・い・や・・や・めろ・・」 景は抵抗する。 その両手首を掴み 動きを封じる。 舌を差し入れ上顎を舐める。景は口内が弱い。 病院で口づけた時に発見した事だ。 舌を絡め吸い甘噛みする。 だんだん景の力が抜け 抵抗する力も弱まる。 少しずつ俺の舌にも応え始める。 「・・んふっ・・」 甘い吐息に 汗をかいた景の匂いがいつもより 強く元を纏う。 あまりの煽りに理性がこなごなに崩れそうだ。 「・・・っつ」 それでも 元は景を引き離した。 大きく眼を見開き元を見ている。 くそっ!と元はベッドに右拳を叩きつける。 その拳を両手で握りしめ かすかに震えながら 俺は言った。 「・・景。 俺は本当はあんたを 助けらんねえのか?」 そう言って元は一歩も動かなくなった。
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