時期

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朝 目が覚めたら元は居なかった。 お粥が作ってあり テーブルには 無理しないようにと書かれた走り書きがあった。 俺はなんか熱と一緒に悪いものも 流れていった気がしている。 少し晴れ晴れとし きっと元に会っても 普通に出来る気がした。 いつか俺の想いは届けばいい。 もう届いているかもしれないし もしかしたら今の元はもう違う方向を 向いてるのかもしれない。 でもいつかは伝えたい。 ただ 確かめ合うのはまだ先でもいいのだ。 きっと 二人にとって正しい時期は必ず 訪れる。それが自分の望む 結果ではなかったとしても。 元は一週間以上姿を見せず 久しぶりにひょこっと店に顔を出して 俺を見た。 視線が合うと すっと目をそらす。 そして逸らしたまま言う。小さい声だ。 「・・景。 夜 マンションに行ってもいい?」 敬語じゃないその言葉は少し甘えに聞こえ 怖がっているようにも感じる。 俺は 元をじっと見る。 看病のお礼を言うのはもう時効だ。 なかなか姿を見せなかったお前が悪い。 「なんで今更聞いてんだお前。 いちいちお伺い立てるぐらいなら合鍵寄越せ」 コーヒーを入れ カウンターに置き 憮然と元を手招きする。 元は 嬉しそうにクシャっと笑い 「いやだ」 と首を振り 一歩足を前へ踏み出した。 そしてそれでもまた微妙に ギクシャクと時を過ごし。。 で。 今ですよね。 正しい時期な筈なのに ちゃんと答えられず いざこうなると やっぱり それでもなんか まだジリジリと 蟠りがあるよーなないよーな。。。 はっきりしない俺を見て 元はふーっとため息をついた。 「やっぱり気にしてますよね? 俺が男を抱いてたの」 はっきり言われ 呆然と元を見る。 あー 認めちゃうんだ。 あ? あぁそうか。やっぱりあの時俺言ったんだ。 びっくりしただろーなぁ。。 でも改めて本人から言われると なかなかの破壊力だ。
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