時期

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「景が好きで でも避けられて ちょっと自棄になってました。 修行が足りませんね。」 灰色の瞳が曇る。 そっと俺から手を離し立ち上がろうとする。 嫌だ。 俺は咄嗟に飛びつき止めようとした。 が、足がもつれ 体勢を崩し 俺はベッドから転がり落ちそうになる。 「・・景っ?」 びっくりした元が急いでその両腕で俺を支え しっかり胸に抱きとめられた。 あ・・危なかった。でもちゃんと言わなきゃ。 正しい時期は 自分で決める。 今が絶対その時なのだ。 元が誰を抱いたとしても 自分の元を 想う気持ちとそれは関係ない。 ピシリと心が決まった。 キッと顔を上げ、元を見つめた。 あぁ。やっぱり俺はこの男が。。。 「好き」 しばらく沈黙が続いた。 あんぐりと口を開けた元は 急に下を向いて固まったまま動かない。 なんだよ。世紀の告白を無視しやがって。。 すんごい勇気だしたのになぁ。。 ちょっと寂しくなって 俯いてる元を覗き込んだ。 元の顔は真っ赤だった。 多分生まれて初めて見る。 びっくりして見上げている俺に気づき また眉をひそめ グイッと俺を引き寄せた。 「あんたは一体なんなんですか。 心臓止まるかと思いましたよ。 もう言質取りましたからね。 嘘だって言っても聞かない」 元はものすごい早口で捲し立て はぁーっと息を吐くと 俺の唇を強く吸った。 嘘じゃねーし。 唇が離れた瞬間そう呟くと 目を合わせ 思わず2人で吹き出した。 笑いながら抱きしめ合う。 やっぱり元と一緒がいい。 ずっと1人だと思っていた俺は やっと1人じゃないと信じられる。 ゆっくり身体を離し 俺を優しく見つめる元に そっとキスをねだった。
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