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高嶺から見ても元はかなりのブラコンだった。
血は繋がっていないらしいが
いつでも兄の景にまとわりつき
口を開けは 景がそう言った
景がこうしてくれたと嬉しそうに話す。
一人っ子の高嶺はそんな元が羨ましかったが
景を知るにつれ、口は悪いが
ふわりとした暖かさのある
景を好きになった。
高嶺は日頃から口数の多い方ではなく、小さい頃は
はしゃぎ回る元と友達のテンポについていけず
ポツンと一人でいる事が多かった。
そんな高嶺を景は手招きし
お菓子をくれ 一緒に食べた事もある。
「美味いだろ?これ」
景はニカっと笑い 棒切れにトランクスを
引っ掛け、振り回しながら走り回る
元を見ながら 「あいつバカだな~」と
笑っていた。
景のような兄が高嶺も欲しかった。
心の底からそう思った。
そんな景を いつからか元は性的対象として
見るようになっていた。
正直かなり衝撃的だった。
いつも違う女を連れ そういう行為をしている
事も知っていたし 何より元はモテた。
まさか元の中でそんな気持ちが生まれ
持て余し 荒れているなどと想像もしなかった。
相手は血の繋がりはなくとも
兄だと元はずっと思っていた筈だし
ましてや同性だ。
でもその反面 やっぱりなと納得する気持ちもある。
良くも悪くも元の世界の中心は
いつだって景だ。
景より好きな人なんて出来るはずがないのだ。
しかし元は絶対に景を好きだとは言わない。
あくまでヤリたいだけだと。
それから元は家に帰らなくなった。
バイトがない日は高嶺の部屋に
転がり込んできた。
鬱々と何も言わず 苦しんでいる元に
何もしてあげられない事が辛かった。
あてのない出口を求めウロウロと彷徨っている。
しかし ある日を境に元はまた大きく変わった。
今までの快活さも吹き荒れた感情も
全てなりを潜め 代わりに冷静な瞳と
確固たる姿勢が生まれ
信念のままにずんずんと前に進んでいく。
何があったのだろう。
何故元が変わったのかはわからなかったが
景を好きだということを認め
隠しもしなくなった。
そして「跡目を継ぐ」とはっきり高嶺に言った。
元は なんだかとても強く見えた。
高嶺は一生
こいつを支えようと改めて決意した。
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