繋がる

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男としてのイライラはかなり 最近まであった様だが。。 元のマンションに若い男が出入りしていた事は 報告を受けている。 毎回同じ男ではなく その全員の身元も 把握済みだ。 元はまがいなりにも次期跡取りだ。 その身に何か起こる様な事態だけは 絶対にあってはならない。 景が退院して半年くらいからだったか。 ずんずんと前に進んでいた元に 少しずつ焦燥が見えるようになった。 普段から余り感情を表に出さない元は 舎弟に意味もなくあたったりは絶対にしない。 だがたまにタバコを持つ指がイライラと 動き 苦しげにため息をついている。 景の事情も高嶺は把握している。 高嶺も景には幸せになって貰いたい。 協力を惜しむつもりもない。 その反面 早く元を楽にしてやって欲しいとも 思っていた。 あの事件の後の二人を見ていると お互いそうなのではないか。。と思うのだが。 元も男だ。 他で発散するのもしょうがない。 だが本当に発散出来ているのだろうか。 元を見ているとそうは思えない。 余計に自分を傷つけているように見える。 なかなか難しいな。 と、当時高嶺も元に気づかれない様に ふっと ため息をついていた。 二人の間に何があったのかまでは知らない。 だがある日高嶺が景のマンションに 元を迎えに行くと 玄関先でそっと キスを交わす二人を見た。 そうか。 やっと通じたのか。 やっと二人は繋がったのだ。 思わずほっとする自分がいる。 車に乗り込み 高嶺の横でタバコに火をつけ 窓外を眺める元は いつも通りクールだったが その瞳は 満ち足りていた。 よかったね。元。 口には出さないが高嶺はそっと元を祝福した。 舎弟に命じて続けていた元の マンションの見張りはもういらないだろう。 それからの元は イラつく事もなく ただ景に逢いに行く頻度が増えた。 で この「景が可愛いすぎる」発言だ。 口に出せるっていいよな。 今までずっと元はその想いを胸にしまい 苦しみに苦しんできた。 高嶺はもう一度チラリと元を見て そっと微笑んだ。 そして言った。 「仕事して下さい」 元はつまらなそうに高嶺を睨み タバコを灰皿に押し付けた。
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