手紙

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しばらく抱き合ったまま動かなかった。 景はふぅと息を吐きそろそろと 身を離す。 元を見つめ ガラステーブルの上を指差した。 片腕で景を抱いたままもう一方で それを取る。 写真だ。 真ん中に痩せた男が写っている。 グシャリと握りつぶしたような跡がある。 「・・遠藤だって。母さんのストーカー」 景はそう言い 頭をコテンと元の胸に 預けた。 こいつが。 元はまた写真を見る。 ストーカーとはなんだ。 「母さんが働いてた店でかなり つきまとってたんだって。 岸田から俺が犯人は別にいると思ってるって 聞いてあの手紙を預けたらしい」 「・・・」 岸田?あの岸田か? 何故岸田がそんな事を? 景を見る。 なんだかとても疲れた顔をしていた。 躊躇し、問うのをやめ 写真を置いてまた景を抱きしめる。 元の腕の中で景はポツリと言った。 「その写真見た時にさ。 寝てもないのに あの夢の炎が 目の前で轟々燃えてたよ。。 思わず写真握りつぶしちゃった。」 景は苦々しく笑った。 「なんかこうなんじゃないかって 勝手に思ってて、でも自分の目の前には 今まで何にも型として無かったからな。 遠藤の顔が分かったのは結構衝撃だった。 もう自分の中でだいぶ整理ついてるって 思ってたんだけど。。」 景は視線をどこか遠くへ向ける 「まぁ 遠藤捕まえて話聞かなきゃ 結局はわかんないけどな」 「・・・そうですね。」 顔がわかったからといって すぐに 遠藤が見つかる訳ではない。 ただ憎むべき相手かもしれない男の 顔を知り それはただ景の激情を煽っただけで 余計に何一つ真実に近づけて いない事を思い知ってしまったのか。 元は景の髪をゆっくり撫でる。 景は気持ち良さそうに目を閉じる。 まだ震えが残る景の唇を優しく噛む。 そっと目を開け元を見る 景の瞳は濡れいつもより熱く燃えていた。 次の瞬間 景は元の唇に己を強く押し付けた。 激しく元の口を吸い 舌を絡め 両手で顔を押さえ また激しく口づける。 元は 景を抱え そのままベッドへ 連れて行き その唇を吸いながらゆっくりおろした。 景が腕を伸ばす。 元の後頭部を掴み引き寄せ また唇を合わす。 元はジャケットを脱ぎ ネクタイをゆるめる。 景はそれを引き抜くとワイシャツのボタンを 外し 前を開け 引き締まった元の胸板を露わにする。 眼鏡を外し 逆に押し倒し 自分も服を脱いで 開いた元の胸に ピタリと自分の胸をくっつけ 「あったかい・・」と言った。
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