不安

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タバコを吸いながら目を瞑ると すぐ景の裸体が目に浮かぶ。 やっとだ。やっと手に入れた。 嬉しい。素直に元は嬉しかった。 景も俺の事を欲しがってくれた。 俺んだろ?と顔を赤くして言った景は 何よりも可愛かった。 意識はすぐに甘美な夜を思い出し反芻する。 「おーい。」 ハッとすると 知らぬ間に長くなっていた タバコの灰が落ちる。 うわっと立ち上がりバタバタ払っている 元に高嶺は苦笑しながら言った。 「景さん 大丈夫だった?」 ケンから電話を受け 高嶺も景を探した。 元とも連絡が取れないが 龍が戻ってきて景のマンションに 行ったことを聞き 高嶺も行ってみると 景のマンションには灯りがついていた。 経緯からして何かはあった筈だし 二人にしておいた方がいいと判断したのだろう 高嶺はケンにだけ連絡を入れ 帰ったようだった。 こいつは昔からそういう所の 判断に間違いがない。 「ああ。心配させて悪かった。 遠藤の写真が手に入って。 景の母の ストーカーだったらしい」 「ストーカー? なんだそれ。 そんな話聞いて 写真見せられたんじゃ 景さん辛かったね。。」 高嶺はそう言い顔をしかめた。 高嶺も景を兄のように慕っている。 うん。と元は頷き またタバコに火をつけた。 「ちょっと仕事調整してくれるか? 出来れば 明日と明後日空けて欲しい」 「いいよ」 高嶺は何で?とは聞かない。 ケンから既に情報が入っているのだろう。 抜け目なく 俺がしたい事を把握し 先回りして準備をするような奴だ。 景は大丈夫だと言ったが まだ心の奥底で傷ついているのがわかる。 早く解放してやりたい。 景の性根は本当はもっと明るく 瑞々しい。 余りにも1人で苦しんだ時間が長く その苦しみが影となって景の心を覆う。 これ以上自分の知らない所で 景が傷つくのは耐えられない。 守りたい。いや。絶対に守る。
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