不安

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「それと岸田はどうしている?」 「岸田さん?」 珍しく想定外だったのだろう。 高嶺は目を瞬き 元の顔を見た。 「本家を出たのは知ってるだろう? 自分の事務所で 地上げとかやってるようだけど。」 岸田は昔 辰雄の右腕 兼ボディーガードとして 本家に居たが 若い舎弟を半殺しにして 咎められ本家を追い出され 自分で事務所を持っている。 以前からもキレると容赦無く 何の表情も変えず相手を殺す寸前まで 殴り倒す岸田は警察からもマークされ 問題視されていて 実質ナンバーツーから転がり落ちていた。 「なんで?」 珍しく高嶺が問いかける。 何か不穏な空気を読み取ったようだった。 元はタバコを灰皿に押し付け吸い殻を投げた。 「景が母親の手紙を持っているのは 知ってるだろう?」 「ああ。変な男につきまとわれてるって 書いてあったらしいな。 だから景さん余計に誰かに殺されたって 思ってるっていう。。。 それが遠藤ってやつなんだろう?」 「そうだ。 その手紙の受取人から手紙を 預かって景に渡したのが岸田なんだ。」 「え?」 高嶺が驚く。なんで?とまた聞く。 そうだ。何故そこで岸田が出てくる。 それもわざわざ受取人を探し出し 景が殺人を疑っていると告げて手紙を 手に入れている。 本家に居たにしろ 岸田と景の接点は 皆無だ。 あの線香花火の日 手紙を渡したのが 岸田だった。 景は「なんであなたが?」と 聞いていた。 おかしい。 漠然と不安がよぎる。 高嶺は敏感にその不安を感じ取った。 「元は景さんの側にいろ。 岸田は俺が調べる。」 はっきりそう言った高嶺を元も真正面から見る。 よろしく頼むと頭を下げると 「お前 今日頭下げてばかりだな」と 高嶺が笑う。 それもケンの情報か。 元は苦笑いして窓外を眺める為に椅子を回した。
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