消印

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とりあえず消印の郵便局へ向かう。 駐車場に車を停め2人で こじんまりとした建物の中に入る。 職員が4、5人の小さな郵便局だ。 たまたま入口にいた職員に声をかける。 「すいません」 「はい。何でしょう?」 「この消印はこちらのものでしょうか?」 初老の職員は景の差し出した封筒の 消印を見ると頷いた。 「そうですね。この地区の郵便物は この消印です。」 話に聞くと この辺は過疎化で 郵便局もここにしか無く かなり広範囲から郵便物が集められて くるらしい。 「そうですか。。」 大体予想していた事だがやはり消印だけで 特定するのは 難しそうだ。 「ちなみにこれは見た事は?」 元が押し花を出して職員へ見せる。 わかりませんねぇとすまなそうに言われ ありがとうございましたと建物を後にした。 車に乗り込み ふぅーと息をつく。 あっという間に手がかり無しだ。 「とりあえず消印の範囲を車で 回ってみましょうか。」 景はさっきの職員に地図を見せ 大体範囲を聞いていた。 「そうだな」 気持ちを切り替え 前を向いた景を横目で ちらりと見た元は微笑みエンジンをかけた。 本当に寂れた港町だった。 時間的に港の作業も終わったのか 人もほとんど居ない。 繁華街らしき物も無く 店舗も家もポツンポツンとあるぐらいだ。 こんな場所に美智子の親は いるのだろうか。
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