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「景。腹減らない?」
元は明るくそう聞いてきた。
そう言えば 昼はとっくに過ぎている。
急に空腹を覚え 減った。。と答えると
元はにこりと微笑み
「あそこで飯食おう。腹が減っては
なんとやらでしょう?」
と ちょっと先に見える食堂らしきものを
指差した。
近くに駅があるらしく
目の前に市営の駐車場がありそこに車を停めた。
食堂のドアを開けると客は誰もいない。
ビニールのカバーがかかったテーブルに座る。
いらっしゃいと割烹着を着た中年の女性が
水を置く。
「お客さん この辺の人じゃないね?」
景は頷き
「そうなんです。 ちょっと人を探してて」と
正直に言った。
「へぇ。人って言ったってこの辺は
昔からずっと住んでる人ばかりだけど。」
やはりそうだよな。
こういう土地でよそ者はきっと目立つ。
「これ見たことないですか?」
元がまた押し花を出す。
「わかんないねぇ。。」
「そうですか。。」
とりあえず注文し あっという間に出てきた
定食を黙って食べる。
「隣町に美智子さんが育った施設があるんだ。」
食べ終わった景は水を一気に飲み
そう言った。
望み薄ではあるが もし彼女の親が
後悔して押し花を送っているなら
その前に施設に接触してきた可能性も
無くはない。
「行ってみよう」
元は微笑み 席を立った。
隣町の施設までは1時間半くらいの距離だ。
流れる車窓を眺めながら
この間思った事を口にする。
「捨てられて憎んで でも親はもしかしたら後悔
してて それで押し花送ってきてるかもしれなくて。
それも10年以上。
それを彼女は一度も捨てないでいたのに
迷惑だって言う。」
元はちらりと景を見たがまた前方へ
視線を移す。
「わかんねえなぁ。。。」
景は肘をついたままそう呟いた。
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