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こうして始まった密会は、今日が最後となる。明日はエリザベートの婚約発表会があるのだ。
「どうしてアナタと結ばれないのかしら……」
エリザベートは何度目になるか分からない疑問を口にする。
「それは何度も話あっただろう?」
ジャンは苦笑いをしながら答えるのだが、エリザベートは口を尖らせて不服顔だ。
「フランソワ様は大変聡明な方だよ」
ジャンの言葉に、エリザベートは頬を膨らます。
「聡明でもおじさんじゃないの!」
エリザベートの言葉にジャンはぷっと吹き出した。
「私はやっぱり、ジャンが好き。ジャンと一緒になりたい」
エリザベートの真剣な声に、ジャンはどうしたら良いのか分からない。
「ねぇ、このまま逃げてしまわない?」
下から覗き込まれたジャンは、少したじろいでしまう。
「ダメだよ。エリザベートの幸せが僕の幸せだから」
だから、と続けるジャンの言葉をエリザベートが人差し指を立てて止める。
「私の幸せは、ジャンと一緒になること」
じっと見つめられて、ジャンはどうしたものかと思案する。
「一緒にならないと、楽しくないわ」
エリザベートは尚も言い募る。
だから、ねぇ、と。
「ダメだよ、エリザベート。僕と一緒になっても幸せにはなれない」
ジャンは言う。
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