キツメにギュッ!

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キツメにギュッ!

 今日は3月31日、日曜日。神奈川県南部で開花の予想だ。城桜高校の裏庭で、一本桜は今年も咲いているだろう。あの子は必ず桜の下で待っている。俺の1年間の準備の、今日は決行の日だ。    ◆◆◆  去年の3月31日は土曜日だった。俺は春から通う校舎を見物しようと高校へ足を運んだ。校舎の間に細い道を見つけて入り込むと、湿った土の道の先に三分咲きのソメイヨシノが立っていた。 「綺麗だな」  突然現れたピンク色に、俺は柄にもなく見とれてしまった。  ふと見ると、小振りな枝が折れて垂れ下がっている。俺はもとに戻らないものかと思い、枝に手を伸ばした。 「阿呆ぉが!」  手首に手刀をくらい、同時に右ふくらはぎを蹴り落とされて、地面に転がった。腹に追い打ちの、かかと蹴りがめり込む。 「ぐあうっ!」 「『桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿』と云う」  視線の先で制服の少女が仁王立ちになっていた。えらい美少女だ。いつの間にいたのだろう。長い黒髪が桜色に輝いて見える。パンツは、ぎり見えないーーおしい! 「聞かんかっ!」  靴のかかとが内蔵に食い込む。 「ぐええっ! やめろっ!」 「桜は傷つけるとそこから腐ってしまう。そんなことも知らんかっ!」     
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