第1章 787 コクピット (遥の視点)

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「副操縦士高橋です。残念ながら着陸ギアが損傷しておりますので、北九州空港には胴体着陸を致します。乗客の皆さんは客室乗務員の指示に従い、着陸時には安全姿勢をとって下さい。詳細は、この後客室乗務員から説明がございます」 私は、一呼吸をおいて言った。 「この様な緊急事態の為に、私は充分訓練を重ねて来ました。また、自衛隊の戦闘機が横でエスコートしてくれています。必ず、皆様をお怪我なく、北九州空港にお届けします。皆様も、客室乗務員の指示に従って頂けます様、お願いします」 待機旋回を離れ、もう一度、北九州空港のダウンウィンドレグに向かう。ダウンウィンドレグで空港を見ると、滑走路に消防車が消化剤を撒いているのが見える。 「FE235便、北九州タワーだ。滑走路には消化剤を撒いた。着陸を許可する」 「着陸許可、了解」私は復唱した。 高度を下げながら、ベースレグへ向けて右へ90度旋回する。速度は150ノット、フラップをフルダウンにする。 更に右へ90度旋回し、ファイナルレグへ、滑走路36に正対する。 ローカライザーキャプチャー、グライドパスキャプチャー。PAPIは白2赤2、オンコースだ。 客室へ安全姿勢アナウンスをする。 「Brace! Brace! Brace!!」私も大声だった。 客室乗務員が大声で安全姿勢の指示を出している筈だ。 GPWSの人工音声が地面接近の警告を鳴らす。ギアを降ろさず着陸しようとしているからだ。     
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