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私は、肩をなでおろした。
コクピットのドアを開けると、客室はもぬけの空だった。
L1ドアを抜け、シュターを滑り降りる。
機首の先に、乗客乗員が集まっている。そこに向かった。
すると、多くの乗客が私に向かってきた。
「あの・・?」私は、何故、人が集まって来ているか分からなかった。
先頭の男性が聞いてくる。
「君が操縦をしてくれたのか?」
私は少し、躊躇しながら言った。
「はい、機長がケガをしたので、私が操縦させて頂きたました、お客様にはご迷惑をお掛けして大変申し訳ありません」私は大きく頭を下げた。
乗客がざわめき、そしてわーっという声が聞こえた。
「彼女が操縦してくれたんだ。ありがとう、君は私達の命の恩人だ・・!!」
大きな歓声と拍手が上がった。
その後、空港のバスが来て、乗客は次々とターミナルに向かって行った。
私は、肩の荷が降りた様に感じて、しばらくそこに佇んでいた。
そこに、私と同じ年くらいの女の子が近づいて来た。とても可愛い。そして言った。
「私、木下綾、先輩、素晴らしい着陸でした。握手をして頂けますか?」
私は、少し照れながら、彼女が差し出した手を握った。そして言った。
「一生懸命、仕事を果たしただけよ」
私は、あれっと思った。
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