第1章 787 コクピット (遥の視点)

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高度を1万フィートにセットして、グレアシールドの自動操縦ボタンを押す。何とか、水平飛行の自動操縦はエンゲージできた。方位は120だったが、とりあえず、このままで問題ないだろう。 酸素マスクを外し、機長を見た。ピクリともしない。目に涙が浮かんで来たが、泣き言は言っていられない。何とかこの機体を無事、地上へ降ろさなければ。 EICASを見ると。左エンジンの疾患以外にも、油圧系統はオールロス、電気操縦系統は動いている。左タンクの燃料が急激に減っている。私はオーバヘッドのクロスフィードバルブを閉めた。残燃料は約8千ガロン、30分しかもたない。幸いのことに電気系統で全ての操縦翼面は動いているようだ。フライバイワイヤの制御も問題ない。左エンジン疾患によるヨーモーメントをラダートリムで自動調整している。 さて、これからどうする・・・ インターフォンが鳴る。客室からだ。 「L1、竹本です、コクピットは大丈夫ですか?」チーフパーサの竹本さんが声を掛けてくる。 私は、機長を一瞥して答えた。 「大丈夫です、機長がケガしましたが、操縦には問題ありません。客室はどうですか・・?」 「客室は、問題ありません。最初の衝撃で2名のCAが軽い怪我しましたが、ベルトサインが点いていたので、緊急降下も含めお客様はお怪我をされていないようです」     
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