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良哉は良哉で、中学の頃はライバルのことで一度は落ちこみつつも、進学校に行く傍らでピアニストへの道も並行して考えていたようだったのに、中学を卒業する頃には意欲を失っていたように思う。
ピアノは相変わらず習っているけれど――それだけ音楽が好きなのだろうけれど、航と良哉が一緒に練習するようなことはなくなっている。
祐真から久しぶりに電話があったのは、航と良哉が東京に行って帰ってきたあとの春休みだった。
『あいつらホントに音、ちゃんと続けてんのか。話を聞いても煮えきらねぇし』
元気か、という挨拶言葉もそこそこに、祐真はせっかちにそんなことを訊ねた。
続けていること、そして実那都が感じていること――航も良哉も祐真と一緒にやりたかったように見えると云ってみると、祐真は長いため息をついて、
おれはもう動き始めたからなぁ、
とつぶやいて、それから、
わかった、
と責任を感じているみたいな声音で云った。
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