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すぐにはぴんと来ることなく、航が云うとおり実那都はすっかり忘れていた。
襲われたのは一度、メグという女性が記憶の中から浮上した。
「忘れてた」
「はっ。それでいいけどさ、実那都をそういう目に遭わせるようなことをおれはやってたってことだ。
清く正しくなんて生きてねぇ。だれだってそうだろ。
実那都、おまえは謝れなかったっつったけど、心の中では悪いって気持ちもあったはずだ。
ケガしてたらどうしようって不安とか怖さとかもあっただろ。
そういう気持ちがあるんなら、醜いことなんてない。
だってさ、そんな気持ちがなければサイコパスだ。けど、実那都は違う」
それから航は少し前のめりになって実那都を覗きこむと――
「おれは実那都っていう人間を見間違ってるか?」
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