『アカムとうり』を売る コミケ80初サークル参加レポート

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 髭の人は一旦ブースを離れたが、離れた場所からまだPOPを見ている。これはチャンスかもと思い、立ち上がった。すると戻って来てくれた。 「この本は昨日できたんです。裁断とかしてなくて、読みにくくてすいません」 「そうなんですか(笑顔)」  本を手に取った。 「僕、本を作るのも、小説をちゃんと書いたのも初めてなんです」 「それは、おめでとうございます(笑顔)」 「さっき、POPを見てらっしゃいましたが?」 「ええ。ファンタジックな話が好きで、そういう小説を探しているんです。これは、どういう話なのでしょうか?」  ここで僕は、ズバっと答えられなかったのだ。それはすなわち、作品のテーマを一言で表せないということ。駄目小説のナンバーワンパターンだ。髭の人は、しどろもどろの説明を最後まで聞いてくれた。 「そうですか、一部下さい。読ませて頂きます」 「は、はい!」  百円を受け取った。髭の人は、にっこり笑って去った。  ああ、いまも書いていて泣きそうだ。なんという読み手のプロ。髭の生えたイカツイ人、あなたが最初の購入者で本当に良かった。最近の天使は、イカツクて髭が生えてるんだね。  感動のあまりその場で泣きそうになる。暑いフリをして何度も顔を拭ったり、目頭を押さえたりした。指の震えが1時間ほど続いたろうか。     
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