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次の購入者は11時50分に現れた。その顔の長い優しい笑顔の男性は、受け取った無料配布本をブースの前で読み始めた。それまでにも、すぐに読み始めて読みながら去っていく人はいたが、足を止めて読む人は初めてだった。
「プッ」と、噴き出した。また数行読んで、
「あははっ!」と、声を出して笑った。
これは嬉しい!(掌編はどちらも軽いノリの楽しい話にした)。
「下らなくてすいません」と、声を掛けてみた。
「いやいや、素晴らしいと思います(笑顔)」
おお、本日2人目の天使登場。今度は顔が長い。
「こっちの本も下さい」
「はい!」
「あ、僕にも下さい」
一緒にいた男性も買ってくれた。
これで3冊。
なんだか足元がふわふわして夢見心地だった。午後が近づいて気温が上がって来たのか、汗も凄い量になってきた。
1.5リットルのポカリスエットを定期的に飲み、ウェットティッシュで腕と首もとを冷やす。カロリーメイトをかじる。
1人きりなので、席を空けるのが躊躇われる。朝寝坊して、コンビニでおにぎりを買えなかったのが痛い。トイレは、我慢できずに貴重品だけを持って行ったが、食べ物を探しまわる間、席を空けることはできないだろう。
なんとか最後まで頑張るぞ。と、気合いを入れ直した12時45分、コミケの大きな袋をたくさん抱えた男性がやって来て、
「二冊下さい!」と、言った。
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