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その時、久しぶりに聞いた声。
反射的に顔を少し上げると、目の前には私に向けて差し出されている大きな手。
「また転けてたね」
更に視線を上げると腰を曲げて懐かしい笑っている日下君の顔が見えた。
その顔に何故か胸の奥がきゅうっとなって苦しくなった。
「俺が転けないようにずっと手を握っていてあげようか?」
は……?
意味が分かるまでに数秒かかった。
そして分かった瞬間、日下君の笑顔を見たら何故か全身が熱くなる。
「嘘、冗談」
それなのにその言葉を聞いた瞬間、一瞬で冷え切った。
由香め、どうなったら日下君が私を好きに繋がった?と心の中で気が逸れるように人のせいにして悪態をつくが、一向に逸れてくれない。
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