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由香に苛々していると目の前の日下君が突然私に差し出していた手を引っ込め、背筋を伸ばすと踵を返した。
すぐに廊下に冷たく響いた重めの足音。
どうやらもう私はどうでも良いらしい。
何?何なの……突然現れたくせに。
転けたままの私を置いていくの?
「日下君!」
私は急激に腹が立って、去ろうとする背中に声を飛ばした。
すると私の声に立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
「どうかした?」
暢気そうないつもの笑顔。
私の苛々は全然治まってくれないのに何なのその態度。
「ムカつく……私には、勉強しか、ないのに……日下君が、黒髪にしてから、勉強だって、手に、つかないのに……!」
苛々を口に出す度、何故か目の奥がツーンとなってきて私は涙を堪えるために歯を食い縛っているというのに。
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