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プロローグ
息ができなかった。
徐々に意識が薄れていく。
体が動かなかった。
自分の長い髪が、重力に逆らって浮かび上がっている。
遠く遠く、光から離れていく。
霞む視界の先、ゆらゆら揺れる世界に手を伸ばした。
口から大きな気泡がでていく。
もう届かない。
苦しい。寒い。
口の中、泥水が流れくると同時に、完全に意識を失った。
「おや、目を覚ましたようですね、楠木芽依さま」
気がつけば、目の前に羊が立っていた。
ぱちり、数度瞬きをして、芽依は重い口を開いた。
「誰……あなた」
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