10.

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「必ず会いに来いよ。待ってるからな」 「そのときまでに世界一有名なトマトになっといてよ?じゃないと、何処にいるか見つけられないから」 冗談を言いながら、キッドがドアを開ける。澄んだドアベルの音がした。ラングもそのまま一緒に外に出て、店の前で二人は向かい合ったが、抱き合いも、握手すらもしなかった。 「それじゃ。元気で、ラング」 「ああ。そっちもあまり無茶するなよ。揉め事はほどほどにな」 キッドが悪童じみた顔で腰の拳銃を引き抜いた。相変わらずの早業で、瞬きするよりはやく、銃口がラングに向けられている。キッドは首を傾げてウインクしながら、それを器用に一回転させてホルスターに戻した。ラングがピウと口笛を吹いた。  朝陽に向かって、キッドが歩き出した。数歩進んだ時、それを見送っていたラングがその背中に叫んだ。 「キッド!」 キッドが目を瞬かせて振り返る。 「お前に会えて、本当に良かった!いい男になれよ!」 キッドが澄んだ瞳を見開いた。俯いて唇を噛む。次に顔を上げた時、青年は晴れやかな笑顔を顔に浮かべていた。  夏の朝陽に青年の姿が見えなくなってしまうまで、ラングはずっとその背を見守っていた。その心は、瑞々しく、ほろ苦い喜びに満ちていた。
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