9.

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キッドはこれには答えなかった。マーロもその必要を感じていない。  アレックがひとりでゲリラ活動をしていたわけでは、もちろん無い。全部で何人が反対運動に関わっているのか、正確な数はわからないが、少なくとも今、ひとりふたり捕まえたところで、残った誰かが工事現場に爆弾を仕掛けるであろう。一網打尽にできなければ、無益な争いは長引いて、あるいは先程キッドが言ったように軍隊まで出動するような大規模な問題に発展してしまう恐れもあった。  お人好しのラングは、今頃、役所でブルースに訴えているだろうか。しかし、マーロも、カレンも、カレンの父親と社員たちも、表向きはまだ全員が善良な市民である。のみならず、カレンの父親はここ数年で事業の成長著しく、高額納税者の仮面も持っていた。ブルースは小役人である。証拠もなしに、ラングの言葉だけを信用して彼ら全員を捕えるなどできようはずはない。  キッドがため息を隠して俯いた。やはりこうなった、そんな思いが、彼の成長しても小柄なままの体を支配する。     
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