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マーロの高圧的な態度は、まだ続いた。元々マーロは店の経営者であり、ラングとキッドとは対等の友人でありながら家長としての責任感を持っていたから、兄というよりも父親的なところもあったのだが、今日の彼の態度は明らかに無理に肩肘張って威圧的に振舞おうとしている不自然さがあった。
「反対にお前らを訴えてやってもいいんだぞ。大事な社員を殺された、と」
「それは誰の台詞?」
マーロの台詞に被せるようなキッドのことばであった。マーロの声がはっきりと震えた。
「……なんだって?」
「言われたんだろ、誰かに。犯人が俺たちだって訴え出るって。おれたちがアレックたちを殺したから、邪魔になると思って。カレンとの婚約破棄と秤にかけられた?」
「ちがう!これは俺の意思で……」
「知ってるよ」
外は白々明けてきた。倉庫の中にも、明り取りの窓と開け放しの入り口から朝陽が入り、お互いの表情がうっすらと見え始める。
見慣れたはずのキッドの顔を認めて、マーロの瞳が驚きに揺れた。彼が思っていたよりもはるかにまっすぐに、キッドがマーロの顔を見つめていたのである。
「知ってるって、何を……」
「マーロが自分の意思でそこに立っていることは、おれだってわかってる。本当は他人任せにして逃げることだってできたのに、そうしないのがマーロだって、おれたちは知ってるよ」
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