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「俺はお前たちを裏切ったんだぞ!?」 キッドが帽子の下からマーロを見上げた。変わらず澄みきったままの笑みが、悲し気に、淋し気に揺らいだ。 「裏切ってないよ」 一匙の怒りも混じっていない声であった。  外から汽笛の音がする。長く尾を引くそれが消えるまで、キッドは黙っていた。なぜ、この音はこうも全身に響くのだろう。マーロの肩が震えている。キッドはゆったりと瞬きをした。 「きみは誰のことも裏切ってない」 キッドが繰り返した。 「ラングと話してたんだ。マーロは愛に不器用すぎるって。他のことならなんでもできるのに、どうして、それだけあんなにダメなんだろうなって」 マーロが泣き笑いの顔で息を吸い込んだ。  出会った日から、真面目で、堅物で、頼り甲斐があった男が、こんな顔をするのは意外だと、キッドは思った。同時に、こんな情けない顔をしていても、マーロはハンサムでかっこいいな、と、ぼんやり考えた。  マーロはいつだって、かっこよかった。背が高くって、ハンサムで、器用で、ちょっと抜けていて……羨ましいと思うこともあった。こういう男になりたいと思ったこともある。愚直なまでの真っ直ぐさがマーロにはあって、実に男らしくて、かっこいい、自慢で憧れの友人であった。     
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