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マーロはまたも理由を探した。なんとか今の自分の立ち位置を正当化しようとし、それによって愛する女とその腹の中の子を守ろうとした。そうして彼が自分自身を説得するのに使ったのは、やはり罪悪感であった。
「俺は弱かった」
マーロの告白にもキッドは落ち着いていた。安心してマーロは話し出す。恐らく、これが最後のチャンスなのだと彼は信じていた。
「罪悪感が逃げ道を探していたんだ。俺はまっすぐそこへ行ってしまった。かつて自分の父親がダム工事に反対して、強制移住に憤激していたのを思い出して、きっとあの村でも強引な鉄道工事など誰も望んでいない、これは正義の行いだと、弱虫の道理で自分を励ました」
「でも気付いていたんだろう?」
マーロが苦笑した。キッドの澄み切った瞳はどこまで見通しているのだろう。
「ああ。わかっていた。そんなことをしても、俺は、お前やラングにもっと罪悪感を感じるだけだった。苦しかったよ。だが……」
マーロが顔を上げた。キッドが微かに首を傾けて、微笑んでいる。マーロは深くうなずいた。
「彼女は、喜んでくれた」
それだけであった。結局、それだけが彼の救いであった。
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