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「カレンは俺といる時間が増えたことを単純に喜んでくれた。やっと父親が自分たちの関係を認めてくれて、その後、俺が父親と上手くやっていることに心底安堵した様子だった。彼女は、自分の父がゲリラと取引しているなんて夢にも思わなかったはずだ。今だって、きっとまだ眠っているよ」
その寝顔を想像して、マーロは少しだけ口角を持ち上げた。その笑顔に、あの夜の幸福の気配を認め、キッドは優しい口調で語り掛けた。
「それでいいよ、マーロ。きみは誰よりも彼女のそばを選んだ。燃えカスみたいな連中は本当は爆弾だ。きみがそれと知ってそっち側にいるのは、恋人とその家族を爆風から守るためだ。世界で一番愛する人を失わないためだ。そうだろ?」
「そういう恥ずかしいことを言うなよ」
「言うさ」
キッドがいつもの悪童じみた笑顔を見せた。
「だって、それがマーロの一番かっこいいところだもの」
「なんだそれは……」
マーロが呟きながら、そっと目頭に手を当てた。
次に顔を上げた時、マーロの顔は晴れやかであった。キッドの視界が微かに滲んだ。
「……マーロ、きみたちの結婚式はいつ?」
キッドは最後の世間話をしようとした。
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