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振り返った視界の中に、女がひとり倒れている。明るい髪色の手足の長い女。急所を撃ち抜かれ、既に息絶えていた。
「……カレン…………?」
女の手元に、自分の射撃と撃たれた反動とで手放したらしい小銃が転がっていた。長い足に靴も履いていない。女がどれだけ焦っていたかを物語る素足は、ここに至るまでに真っ黒に汚れてしまっていた。
いつのときか、彼女は知ってしまったのである。父と婚約者が何をしているのか。それから愛する二人が進む道を阻む者を、彼女自身が取り除こうと決意した。あの争いを憎んでいた女が銃を手に取った。そうして、父のためか、愛する婚約者のためか、産まれてくる子のためか、ここまで必死に急いできたのであろう女の裸足の足音は、汽笛にかき消されキッドたちには聞こえなかった。
キッドには、カレンが自分の命を狙ったことがすぐに理解できたし、そんなことは少しも悲しくも、意外でもなかった。だが、その銃弾はどこへ?自分が振り返りさえしなければ、きっと自分に命中していたはずの弾は?
呼吸が止まりそうになった。ヒュッと嫌な音が自分の喉から聞こえた。
キッドは慌てて、また振り返った。
「マーロ!しっかりしろよ、マーロ!」
足がもつれて転びそうになりながら駆け寄る。マーロの横に膝をつき、倒れた体を抱え起こした。
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