9.

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 マーロの腹部から、血が止めどなく溢れている。キッドは必死でそこに手を当てたが、指の間から真っ赤な液体がどんどん流れ出て、マーロの背を支える指先にまで力がこもった。 「……カレンは?」 マーロがうっすらと目を開いた。キッドは「無事だ」と答えようとしたが、パクパクと唇が動くばかりで、声が喉の奥につかえて出てこない。代わりに大粒の涙が震える瞳からボロボロと零れた。左頬では血と涙が混ざって薄桃色に滲む。 「そうか。……俺の銃も大した腕だろう?」 「なんで……なんで撃った?彼女は……彼女のお腹にはきみの……」 死にかけのマーロの方がマシなほど切れ切れにしか喋れないキッドに、マーロが微笑した。 「どうしてだろうな」 キッドに向けて銃を構えたカレンの姿を認めた瞬間、マーロの体は彼女を撃とうと動いていた。理由はわからないが、迷いは一切なかったし、彼女が死んだとわかった今でも微塵の後悔もない。こうなることを望んでいたような気さえする。体に致命傷を負いながら、不思議なほど、マーロの心は穏やかであった。 「手が、汚れるぞ……」 マーロの大きな手が、血塗れのキッドの手を包み込んだ。  マーロとは反対にキッドの心は千々に乱れている。ボロボロと涙を零し続け、時々鼻をすすりながら、必死でマーロの傷口を抑えた。 「汚れるなんてどうだっていいよ!待ってて、マーロ。何かあるから……血を止めないと……」     
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