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キッドが責めるような瞳でマーロを見た。マーロの意図を察したのであろう。思わず後ずさりそうになったキッドの体を、どこにそんな力が残っていたのか、マーロが抱き寄せるように押しとどめた。
「頼む、キッド」
瞠目し、いやいやと首を振るキッドの肩を、マーロが弱々しく叩いた。
キッドは唇を噛みしめて天を仰いだ。祈るような神は知らなかったが、そうしなければならないように思った。
そのまま長く息を吐いた。
息を吐ききって、ゆっくりと顎を戻す。マーロの微笑みに、なんとか笑顔を返せたであろうか。左手を銃にかけた。
「いい男になれよ、キッド」
最後にマーロが呟いた。キッドは別離の銃弾を撃った。射撃音がいやに悲しく耳に残った。
マーロの亡骸を静かに横たえるキッドの背後に、いつからいたのか、ラングと町役人のブルースが立っていた。呆然と立ち尽くす二人に、キッドは俯いたまま右手を上げる。力のこもっていない指は、それでもなんとか、奥の机を示していた。
ブルースが無言で机に歩み寄り、その上に置かれたマーロのメモを確認する。眉間に深く皺を刻んで引き返そうとし、キッドとマーロの横で足を止めた。
「……すまない」
顔なじみの町役人はそう言って、帽子を脱いだ。それからラングの元へ歩み寄り、
「あとは任せておけ」
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