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「男ってのは、まったく……。よく見なよ。片方はまだ坊やだよ」
「坊や?」
急いでいたので対峙する二人をよく見ていなかったラングは、紙袋を抱えなおしながら顔をあげ、本日三回目の「嘘だろ」を呟いた。
「なんだって、あんなチビが……」
衆目を集めているはずであった。決闘となれば普段だって野次馬は集まるが、それにしても人が多いと思ったのである。殊に女が多かった。面白がって賭けをする男どもよりも心配顔の女が多いなんてのは、ラングも初めて見る。
その理由が"彼"であった。ラングの店の前で対峙する男の一方は背も低く、まるで子どもの体型である。そんな細い体で銃を扱えるのか、疑問なほどに華奢であった。陽の加減でシルエット以外の造作はよく見えないが、恐らくは十代の少年であろう。一丁前にガンベルトを巻いているが、ラングが見ている右側には肝心の銃が見えない。
(左利き?しかし本当にチビだな。銃の扱いなんて知ってるのか?)
少年が相対しているのは、手入れの雑な口髭が汚らしくカールした、こちらはどう見ても四十過ぎの男であった。中肉中背で、日焼けした顔が脂ぎっており、百歩譲っても美男とは言えない。だが銃の扱いは慣れていそうな風貌である。
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