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 人を外見ばかりで判断するものではないが、自然、人々の同情の秤は少年に傾いた。あぁ、こんなお天気のよい日に、こんなあどけない坊やが、こんな不細工な男に撃たれて死んでしまうとは!そういう憐憫の感情が、道向こうの野次馬の顔にも、はっきりと浮かんでいた。 「さっき、あの髭もじゃが怒鳴ってたんだけど、こないだ隣村で騒動があったろ?その因縁らしいよ」 ロズが囁くように教えてくれた。  隣村では以前から、土地の権利を巡って騒動が続いていた。その土地に牧場を構えるハンという牧場主と、貴族に癒着したロータスという役人とが対立していて、この間ついにそれが双方多数の死者を出す抗争にまで発展したのである。役人ロータス側が雇った、護衛とは名ばかりのロブというゴロツキが、同じく牧場主側が用心棒として雇った一味のアレックという男を、口論の末に殺害したことが発端であった。ラングも風の便りに聞き知っただけだが、騒動の中で互いのアジトなどはすべて焼け、牧場主のハンも死に、生き残った者も多数処罰されたそうである。中でも真っ先に手を出したとされるロブは主犯格と見做され、絞首刑になったはずであった。結局、土地は教会の一時預かりとなり、いずれ然るべき処置がなされるのだそうだ。  貴族が絡んでいる辺りがキナ臭かったが、そんな世の中だから決闘騒ぎもやまないのだろう、と、ぼんやりラングが思っていた時である。突然、"髭もじゃ"が叫んだ。 「おい、お前!」     
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