青き時間は長くも短い

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 部屋全体が雲と炭の色で染まっていて、太陽のような温かな光で満ちている。その光に照らされると、二人の本当の色がわかった。同時に、ここが二人の家だということがよくわかった。  クロは炭で、シロは雲の色だった。青でも、唐辛子や葡萄、草の色でもない。彼らみたいな色をした人なんて、これまで見たことも聞いたこともない。そんな色の国は近くにないはずだし、二人は何者なのだろうか。 「さあさあ、そこに座って、いまコーヒーを持ってくるから」 「私はクッキーを探してくるわ、坊やは部屋のインテリアでも眺めててね」  光沢のある炭色のソファに腰かける。見た目に寄らず、触り心地はフワフワと柔らかで、痛む腰全体を包み込んでくれる。何て快適なのだろう。このまま、眠ってしまいそうだ。だけど僕は文明の味が恋しくて、インテリアで眠気を紛らわせることにした。  部屋は不思議なものがたくさんだ。砂が上る砂時計に、ガラスの花びらが散っては生えてくる百合の鉢植え、風もないのに毛が揺れる絨毯もある。その中で僕が一番気に入ったのは、四角い枠の中で家主二人の色が混ざり合う飾りだった。ちょうど僕の正面にあって、見ているだけでも楽しい。  じっと見つめていると、二人の色だけでなく別の色も見えてくるのだ。この国の色や、まだ見ぬ国々の色、もちろん僕の色も浮かび上がる。まるで家主の二色が、他の色を生み出したみたいだ。
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