青き時間は長くも短い

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 祖国の色に少し安心感を抱きつつ、他の色にも想いを馳せる。これから、僕はこれらの色を集めなくてはいけない。八つの国から色を集めて、青い国に持ち帰るのだ。そうすれば僕も立派な大人である。でも、その道は本当に長い。ほぼ毎日歩いてやっと到着したこの場所だ。でも、ここはまだ一か所目。あと七つも国がある。  たった十年だと思っていた。でも今では一日すら長い。  変わらぬ日々に、透明感を少しずつ失う身体。こういうことがもし大人なら、僕は死んだ方がましだと思った。  ただ、このように「死にたい」と言葉にするのは簡単だけど、本当に死ぬのは怖い。四世紀を経た深くくすんだ僕の体は、砕けていくつもの青い球になる。そうして、青空に帰ってゆくのだ。でも、その後のことがわからない。帰った青はどうなるのだろうか。誰に聞いても、その答えを知る人はいなくて、誰もが死んで消えることを恐れている。たぶん僕たちは理解できないものや、曖昧で分けられないものが恐ろしいのである。  大人は、そういう恐怖に立ち向かわなければいけないのかもしれない。老いと死に怯えるのではなく、受け入れて、いつでもかかってこいと身構えるのだ。だから、大人はみんな楽しそうに暮らしている。覚悟ができているから、笑っていられるのである。覚悟が甘い僕は、まだそれが怖くてたまらなかった。
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