二番手になれない女

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お酒の勢いだった。 くっついてきた彼を引き剥がす事だって、距離を置くことだって出来た。それをしなかったのは私の甘さと期待だった。アイツから彼を奪う事が出来るんじゃないかと、そう思ってしまったのだ。 勢いでのキスから、その気にさせるようなボディタッチ。酔っているだけの事だとはわかっていても、アイツの愚痴を溢す彼に私が優しくしてあげればと、私にも遊びでもチャンスがあるのではないかと思ったのだ。 昼夜の時間のわからない薄暗いホテルのベッドで目を覚ました彼は、朧げな記憶を辿りながら、ひたすらに謝った。「ごめん。ごめん。こんなことをするつもりはなかった」と。 少しの期待が踏みにじられた瞬間だった。 私は「なにも無かったわよ。ベッドに連れ込まれたけど、すぐに寝ちゃったじゃない。泥酔状態で、それどころじゃ無かったんだから!」と、精一杯のの強がりをしてみせた。 本当は何もない事は無かった。酔った勢いとはいえ、身体を交えた。けれど、それを言ってしまったら、私の想いを気持ちを全て否定するような、踏みにじられたような感じがした。 「本当に?本当に何も無かった?………………そっか……………よかった…………。ごめんな、本当に。すまない」 彼は小さく安堵の溜息をし、そしてひたすら私に謝り続けた。私は「奥さんには****には内緒にしておくから。こっそり帰ろっか」と、かれをなだめる事しかできなかった。言えなかった。本当は貴方としたのよ。私はあなたに気持ちよくしてもらったの、なんて。責任取りなさいよ、なんて事言えるわけがなかった。結局都合の良い女にすらなれない私は、帰り際まで謝り続ける彼をいつもの冗談めかした言い方で励ます事しか出来ないのだ。結局二番手になる事すら叶わずに、私の冷たい夏が始まった。
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