0人が本棚に入れています
本棚に追加
黒い化け物
俺は、気が付いたら暗闇の中に居た。何故か息が切れており、血の匂いがする。
頭がぼんやりしていて、何も思い出せない。暗闇を暫く見回すと目が慣れてきた。
そして、最初に見えた物は、人の死体。それから所々に飛び散る血。
完全に暗闇に慣れると、そこには、数え切れぬ程の死体があった。
更に俺は、手に刀を持っていた。
俺は一体何をしていたんだ......?
驚きや恐怖と言う感情より、疑問と言う感情が深かった。
暫く、その場で立ち止まり、ぼーっとしていると突然、耳に響くブザーの音と同時に暗闇が眩しい光に照らされ、真っ白な部屋に変わった。
部屋の形は、長方形で横幅が広く、部屋全体が白い鉄のタイルの壁で囲まれていて、俺から見て正面に大きな窓ガラスがあった。
ガラスの奥には、四十代と二十代くらいの白衣を着た、二人の男が立っていた。
すると、また次は、二回ブザーの音が短く鳴り響き、四十代の男が俺に話しかけた。
「被験体No.二十二調子はどうかな?」
被験体.....?俺は実験されていたのか?
まだ頭がぼんやりしている。意識がはっきしない。
「被験体No.二十二聞こえているか?」
俺は口を動かそうとするが、疲れているのか、体全体が重く、口も開かない。
「様子がおかしいな......助手君、見てきてくれないか?」
「はい。分かりました」
正面の窓ガラス横にある小さな扉が開き、二十代の男が、俺に近づいてきた。
「被験体No.二十二僕の事が分かりますか?」
俺は力無く、首を縦に振る。
「では、此処がどこか分かりますか?」
俺は、首を横に振った。
「なるほど......」
二十代の男は、奥の部屋へ戻り、もう一人の男に報告した。
「どうやら記憶障害を起こしているようです」
「そうか......良し、連れ戻して来い」
「分かりました」
すると、再び二十代の男は、俺の所まで来て、無言で手を引っ張り俺を奥の部屋へと連れて行った。
最初のコメントを投稿しよう!