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雀の母がおらに尋ねる。
おらの表情を曇らせる。
故郷からずっと飛び続けて、おらとそっくりな仲間を見かけたことはなかった。
「ここら辺では見かけないお姿ですので、お名前がわからなくて。どこか遠くからお越しになられたのですか? 私は、人間から雀と呼ばれたという言い伝えが後世まで継がれています」
雀の母はそう言うと、空を見上げた。
気づけば、雨は上がり、木々の隙間から太陽が見え隠れしている。
葉から水滴がキラキラと太陽の光を浴びながら流れ、ポチョンと滴る。
「あら、雨が上がりましたね」
雀の母が振り返る時には、おらは雀の巣を飛び去っていた。
雨に濡れた翼はまだ重いが、いつものように木々を抜けて、空に出た。
太陽の光が眩しく感じる。
体も顔も濡れていて、視界がキラキラと滲む。
上空で風に乗ると、風は雫を拭った。
【第一章 完】 第二章へ続く。
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