第二章 人間が名前を付ける

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故郷からずいぶんと遠くまで飛んできた。 林を抜け、広野を越え、今は荒廃した灰色の地上が広がっていた。 倒壊し、朽ちた建物が一面に広がり、まるで灰色の海のようだった。 そこには、お花たちも動物たちも居ない。 どこを見ても、色なんてなかった。 おらの自慢の翼も綻び、羽が抜け始めていた。 抜けていく羽が、夕日の陽光によって煌めきながら粉雪のように降りゆく。 それでも、翼を休めることはできなかった。 生きている意味さえも奪われそうで。 夕日が地平線に近づくにつれ、その陽光も鋭さを増し、眩い光線となって、おらの体を照らす。 飛び続けてきた翼は力を失いはじめ、思うように動かない。 風も上手く掴めない。 だんだんと高度が下がっていく。 虚ろになった瞬間、おらの体は灰色の地上に叩きつけられた。 もう、翼を折り畳むことさえもできない。 上体を起こそうとしても力が入らない。 ギシギシと重い顔を上げると、そこには大きな影がいた。 それはそれは大きな影で、それが、すぐに人間だとわかった。
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