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駅に近づき少しだが人が増えた。 飲み会終わり、残業終わり、色々な人がいる中 龍也はすぐに見つかった。 「龍也」 ちょっと離れた位置から呼ぶと スマホに視線を落としていた龍也は すっと顔を上げ、綾に気づくなりこちらへ歩み寄ってきた。 「ごめん急に呼び出して」 綾がこくっと頷く。 すると龍也は優しく綾の手を引いた。 「ちょっと歩こ」 外で手を繋ぐなんて久しぶりだった。 そのまま特に会話も無いまま歩く。 少し離れた小さな公園のベンチまでで 龍也の足は止まった。 「いいの?こんな所来てて。 明日だって早いんでしょう?」 龍也が腰を下ろすから綾も下ろす。 手は繋いだまま龍也の太ももの上だった。 「早いから来たんだよ。 ほら、明日からはすぐ会いに来れねえかもしれないし」 だったら尚更、と綾は思った。 「じゃ何でもっと前に言ってくれなかったの? そうしてくれれば 会える時間も工夫して増やしてたし、心の準備だって」 喧嘩がしたい訳じゃないのは分かっているのに 綾の一度開いた口は止まらない。 「これがもし付き合いたてだったら 早めに私に言ってたんじゃないの? 今は私と離れてもいいから 別に後回しでいいやって思ってっ...」 言い終わる前に抱きしめられていた。 手は握ったまま、もう片方の手で引き寄せられた。 好きな匂いがする。 涙が出そうになるくらい好きで、 だからこそ今は苦しい。
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