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「ずるいよ龍也だけ」
だってそうではないか。
龍也が言ういつも通りな生活は綾にとって本当の意味でいつも通りだったのに龍也は違ったのだ。
彼だけは遠距離になる事実を知っていた。
それはずるいと思う。
綾は涙目に変わりそうになるも必死に我慢する。
泣いて困らせるのは1番良くない。
「私も一緒に離れたくないねって言い合いたかったよ。
こんなの大人にもなって、ちょっと変かもしれないけど」
すると龍也は手で口を拭い、また『ごめん』と言った。
「龍也、確かにさっきはちょっとあれだったけど
私別に怒ってたわけじゃないよ?
.....ただ少し寂しかっただけだから。謝らないでよ」
本当に怒っていたらここにすら来ていない。
素直に気持ちをぶつける事も無い。
何なのよと思ったりはしたけれど
それは全て不安だったからなのだ。
龍也の気持ちが離れてしまっているのではと
不安になっていたからだ。
「...それにね?私ちょっと安心した」
龍也の驚く顔に綾はすかさず
『離れる事が、じゃないよ?』と口元を緩ます。
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