第一章 ブルーな夏休み

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私は宮本香苗(みやもとかなえ)、ごく普通の中学二年生。 どのへんが普通かだって? 身長はそこそこ、髪色は黒で普段はおろしてる。頭のデキはいい方かな。 部活はバレー部。よくある弱小運動部だけど、弱小なりに一生懸命練習に励んでる。部活のない日は友達とカラオケとか行って遊んだり、家で宿題に追われたり。 クラスでは割とわいわいするほうだけど、特別目立ってるわけじゃないと思う。 ほら、クラスによくいる普通の女子中学生でしょ。 あ、大事なところ忘れてた。 好きな食べ物は甘いもの全般。特に苺のショートケーキが大好き。 それから、好きな人は... ちらりと窓際一番前の席に目をやる。 そこには気だるそうに頬杖をついて先生の話を聞く福山君の姿があった。 あの人に片想いしてかれこれ1年経つ。 バスケ部で女子人気も高い福山優斗(ふくやまゆうと)は、誰にでも優しく接する人でいつもふわふわ笑っている。 学級委員でクラスを引っ張るってタイプの人ではないけれど、その素敵な笑顔はみんなを惹き付ける魅力がある。 彼には、雨でも夜でも陽だまりの中にいるように感じさせる超能力があると私は踏んでいる。 それだけじゃない、彼には他にもたくさん素敵なところがあって...。 「...ではこれから終業式なので廊下に並んでください。」 担任の先生の締めの言葉で我に返る。 それと同時にふと、桃が残していった言葉を思い出す。 「なら夏休み中に彼氏つくればいいんじゃない!」 はぁ、それなら夏休みでもっと彼と仲良くなれたらいいのにな。 今年の夏休みがあんな結末に終わるなんて今は知る由もない彼女は心の声をそう締めくくり、やってきた桃に引かれるようにして廊下へ向かった。
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