第二章 霹靂は教室に飛ぶ

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ありきたりで退屈な朝ごはんのような終業式が終わり、放課後の教室は机や椅子をガタガタさせる音と夏休みへの期待と興奮で満ちていた。 私達は桃の机の近くに集まって、夏休みに企画しているクラス会について話していた。 クラスのみんなで海に行こうという計画だ。 すでにみんなにアンケートを取り日程は決まったが、それ以外のことはまだほとんど決まっていないのが現状である。 「...うーん。いろいろ決めなきゃいけないことあって大変だなあ。」 「そうだな、クラスのみんなの意見もちゃんと取り入れなきゃいけないしな。」 桃のぼやきに相づちを打ったのは、彼女とともに学級委員を務める水野慎吾(みずのしんご)だ。いかにも野球部って見た目をしていて、性格はお調子者で一見ガキ大将っぽいけど実は結構大人びていたりする。 「そしたら男女で一人ずつ幹事的なことしてくれる人が欲しいね!あたしは夏水泳がちょっと忙しくなりそうだから、女子はあたし以外で一人ほしい!」 一緒に話していた女子が後ずさりをするかのように身じろぎをした。それもそうだ、クラス会の幹事なんて面倒に決まってる。私だって... 桃がキラキラ目を輝かせて自分を見つめているのに気づいた。明らかに私にやってほしそうにしている目だった。私はその瞳のまぶしさに負け、観念して面倒を引き受けることにした。 「しかたないなー。私がやるよ。」 「ありがと香苗!助かるよ!」 嬉しそうにあどけなく笑う桃を見ると、その純真さが素敵だしうらやましいなといつも思う。 私には到底できない笑顔である。
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