砂漠の賢者

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「『鍵』の調整?」 「ああ。此方の言語解読と“意識”による意思疏通の為の“ぷろぐらむ”を組んでいるのだと言っていた」 カヤという人は、最初期の異世界研究者で『鍵』の開発に関わっていた人物ということのようだ。 恐らく、この場所は此方に造られた研究拠点。『鍵』開発のラボといったところか。 基本的な施設機能は休止しているけれど、何かしら『鍵』に作用するものがあるのではないかとセントーラさんは言う。 此方では種族によって寿命がまちまちで、成人の認識も寿命の長さで変わるらしい。 普段は『鍵』が自動的に自分の認識を相手の認識に合わせて伝えるので、認識の相違がなかった。でも、この施設の中ではその機能が上手く作用しないらしい。 竜族の体には、天然で『鍵』の役割を果たす機能が備わっているらしいので、結果、ガッター爺さんには認識がずれたままの歳が伝わり、ジアには正しい認識で年齢が伝わった。 結論。此方での僕の歳は、ジアより少し下くらい、だそうです。 …ねえ、抱っこ止めようよ…。 そういえば、とセントーラさんが続ける。 「副次的に、持主の気配をぼかす認識阻害も組み込んでいるところだと言っていたな」 「“気配をぼかす”か。道理で…」 「ジア?」 合点がいったと一人納得するジア。 「トウヤの気配はいつも曖昧で、酷く読みにくい。貴種特有のものかと思ったが、成る程それ(・・)のせいだったわけか。『鍵』とは、これだろう?」 革紐で吊るして胸元に入れていた二つの『鍵』を、スルリとジアの手が引き出す。 …ついでに何気無く胸触るの止めてね。触るべき胸は無いから。無いから!! 胸を触るジアの手を押さえていると、逆の手で『鍵』を玩びながら、しれっとジアは話しを続ける。 「これ(・・)からは、トウヤと同じ気配がする。むしろ、トウヤ自身より気配が強いぐらいだ」 「ジアヴァイスの認識をも阻害するとは、流石だな。まぁ、元々は竜族から逃げる為にその機能を付加したのだろうから、本懐は遂げたということだな」 「うむ。カヤの逃げっぷりはいつも見事だったからのう。ゼラの奴を振り回せるのはカヤくらいじゃろな」 「ゼラさん?」 「さっき話していたジアの爺さん、先代『砂竜』じゃよ」 「カヤさんと知り合いなんですか?」 「知り合いというか、カヤはゼラの『嫁』じゃな」 「へ?…ええ!?」 まさかの、嫁でした。
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