砂漠の賢者

12/16
1154人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
「何と、まだ子供じゃないか!『嫁』と聞いたから、てっきり成人しとるもんだとばかり…。ジア、まさかまだ手は出しておらんじゃろうな?」 あ、やっぱりそっち? 此方じゃ二十五歳は子供ってことか。 あと、ガッター爺さん、ごめんなさい。既に手遅れです。 「?成人しているだろう?むしろ、そんなに上だと思わなかったくらいだぞ?」 あれ? 違うの? やっぱ聞いた通り、成人は十五歳ってこと?じゃあ、二十五歳は大人? どっちよ? 「ふむ?二十五歳じゃろう?」 「あ?二十五歳だろ?」 ん~? 何か、ガッター爺さんとジア、会話が噛み合ってなくない? 「少し確認したいのだが。トウヤ君は今、どういう方法で此方の者達と意思の疏通をしている?」 唐突なセントーラさんの問い。 「今君の話している言葉は、学習して会得した此方の言語なのか? それとも、竜族のように特殊な生体器官によるものか?」 「ぇっと…どちらも、違います…」 というか、竜族の特殊な生体器官って何!? 「ではやはり、貴種の持つ『鍵』の効果によるものか…」 「 っな、何で、知って…」 それ、一応機密事項!此方の人に勝手に教えちゃ駄目なヤツ! 「昔、カヤに教えてもらったのだ」 カヤさんって、昔ここ居た貴種の人?その人『鍵』の事、 言っちゃったの? あれ? でも、機密事項に抵触する発言は強制停止になって、此方の言葉には訳されない筈じゃ…? 酷い時には『鍵』の強制停止処分もあるとか聞いたけど? そもそも、数千年も生きてるお爺さんの言う『昔』って、どれくらい前の事? 「あの…その、カヤさんって方が居たのは、どれくらい前の事ですか?」 「カヤか? 大体、二千年程前か…」 二千年…? 彼方と此方の時間軸に、そう違いは無い。世界同士が繋がって(・・・・)いる間は。 彼方では、異世界の存在が確認されてからまだ百年も経っていない。 若い頃に異世界研究機関で働いていたという祖母に、聞いた事がある。 彼方と此方の繋がりは、一度切れた事があるらしい。 彼方では数ヶ月後に、また世界が繋がったけれど、その間に此方では数千年が経過していたという。 つまり、カヤさんは最初期に此方に渡航した、研究者の人ってことか…。 「恐らく、ガットとジアヴァイスで言葉の認識が違ったのは、この場所のせいだろう。ここでカヤは『鍵』の調整をしていたらしいからな」
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!